シドニー五輪代表の布陣1
1998年
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親善試合(アルゼンチン戦)(11月)
バンコクアジア大会(12月)
親善試合
(アルゼンチン戦)(11月)
1―0 U―21アルゼンチン代表
(中村)
左の布陣が、トルシエ体制下で始動した、2年後のシドニー五輪を目指すU-21日本代表チームの、初めての試合、U-21アルゼンチン戦の布陣です。
●この試合を観ようと、会場の国立には47000人の観衆が集りました。如何にこのチームに対する期待が大きいかの現われでしょう。
●この試合でトルシエ監督は、日本のFWのメンバーに怪我人やJリーグの試合で疲労している選手が多く、また、アルゼンチンの攻撃能力の高さを警戒した事もあり、FWは1人だけで、中盤を厚くした3-6-1の布陣を敷きました。
●GKは、97年でWユース代表だった南、DFも同じく97Wユース代表の古賀(正)、宮本、戸田の3バック、左右のウイングには左には初選出の中谷、右には98アジアユース代表の市川、MFはボランチの位置には代表初選出の石井と98アジアユース代表の稲本のドイスボランチ、攻撃的な位置には97Wユース代表の中村、98アジアユース代表の小野、FWは97Wユース代表の福田の1トップでした。
●南は、この試合では終始落ち着きのあるプレーを見せていました。後半は相手のシュートがポストに嫌われるなど、やや幸運な面もありましたが、非常に安定感のあるプレーで存在感を示していました。
●中央に宮本が入った3バックも、この試合では3人が並列に並び、終始高い位置に最終ラインを保ち積極的な押し上げを見せ、再三の相手をオフサイドトラップにかけていました。また、宮本自身も的確なカバーリングでアルゼンチン選手の突破を防ぎ活躍。しかし、後半はやや息切れしたのか、少し集中が切れかかっている場面もあり、フィードが不安定になる場面もありました。
ストッパーに入った古賀(正)と戸田も、アルゼンチンの高い個人技の前にしても、体を張った守りと、タイミングのいいフォローで何とか相手を抑えていました。
●左右のウイングの中谷、市川はこの試合では守備もしっかりとこなし、攻撃参加の時には積極的に攻め上がり、何回かチャンスも作るなどいい出来でした。
●ボランチの位置の石井と稲本は、やや石井の方が守備負担が多く、稲本の方が前線の方に顔を出すというシーンが多く見られました。石井は、試合序盤こそアルゼンチンの素早い攻撃に戸惑い、ポジショニングが悪く、抜かれてしまう場面も見られましたが、後半になると中盤でもポジショニングが安定し、豊富な運動量で攻守の繋ぎにいい働きを見せていました。稲本も中盤での積極的なチェックと攻め上がりで、何回かチャンスに絡む動きを見せていました。
●攻撃的な位置に入った小野と中村は、FWが福田1人だったという事もあり、パスコースが限定されてしまい、更に自身もFWのいない分だけ前に出なければいけない等、多くの役割を要求されていました。小野は疲れが溜まっているのか、何回か素晴しいパスは見せましたが全体的には運動量も少なく、中村も1点は取るものの、うまくパスが通らないなど、全体的な出来は決して十分な出来ではありませんでした。
●1トップとして起用された福田も、ボールをもらい合わせて積極的にシュートを狙っていくという、本来の自分のタイプとは違い、前線でのボールキープや攻めの起点となるポストプレーなどの役割を求められ、この試合では自分の持ち味が出せていませんでした。しかし、それでも体を張ったプレーでなかば強引でもシュートを打ちに行くなど、不慣れながらも頑張っていました。
●試合の方は、序盤から個人技に優れるアルゼンチンのペース。日本はその素早い攻撃に最初の内は戸惑い、またポジショニング等も悪く、お互いの連携がまだ十分ではない印象でした。
●それでも、時間が経つ内に守備面でお互いのカバーリングが出来る要になる、攻める時もパスが通る様になってきます。中盤のメンバーを厚くした事で、アルゼンチンの攻撃を早い段階で潰す事ができていました。
●アルゼンチン個々の狭い場面では、高い個人技を何度も見せつけられましたが、まだまだチームとしては十分には機能していませんでした。
●このまま、0-0で前半終了かな?と思い始めた矢先の前半41分、日本は中盤でボールを繋ぎ、稲本がボールを持ってペナルティエリアに突進、1度ボールはアルゼンチンDFにカットされますがそのボールが丁度、中村の目の前にこぼれます。中村はアルゼンチンのGKが前に出ているのを見て、落ち着き払ってGKの頭を越すループシュート。これが見事に決まり、日本はアルゼンチン相手に先制し前半を終えます。
●後半、日本は中盤での連携やポジショニングが前半よりもよくなり、サイド攻撃を中心に何回もチャンスが生まれる様になります。中村―中谷の左サイド、小野―市川の右サイドはこれから先、協力な武器になって行きそうです。中盤でも、中村・小野が限られた少ない選択枝から的確な
パスを出せる様になり会場は再三湧きます。見ていて非常にリズミカルで楽しい攻撃が出来ていました。
●アルゼンチンも、中盤を素早い突破で何とかチャンスを作ろうとしますが、南のセーブや宮本のカバーリング、またシュートがポストに嫌われるなど、どうしても点が奪えません。チーム全体が若いせいか、プレーにも焦りが見られました。
●トルシエ監督は、後半、福田に代えて高原を、小野に変わって明神、中谷に代えて古賀(誠)を投入しました。
●高原は、福田と同じポジションに入り30分程プレー。ポストプレー等の役割を無難にこなしていましたがシュートチャンスに絡む様な場面はありませんでした。明神も、通常よりはやや高めの位置でのプレーでしたが、中盤での守備、攻守の繋ぎに大きな問題はなくプレーしていました。
●古賀(誠)は、中谷に代わって左アウトサイドでプレー。プレー時間は短かったものの、快速を飛ばしオーバーラップし、得意の左足から絶妙なセンタリングを何本か放つなど、存在感をしっかりとアピールしていました。余談ですが、古賀(正)との兄弟同時出場になりました。
●結局、試合はこのまま1―0で終了。日本はベストメンバーではないとはいえ、強敵アルンゼンチンに勝利という幸先のいいスタートを切る事が出来ました。
●トルシエの積極的に押し上げる戦術・パス回し等が、予想以上に選手に浸透し、選手はそれを実践出来ていました。また選手交代のタイミング、代える選手も的確だったと思います。
●前回の五輪代表以上に能力の高いメンバーが揃っていると言っても過言ではない今回のシドニー五輪代表。この試合ではまだまだ荒削りですが、とても面白い、様々な可能性を感じるサッカーを見せてくれました。これから先が非常に楽しみです。
バンコクアジア大会(12月)
5―0 ネパール
(稲本2、小野、福田2)
1―0 インド
(福田)
日本五輪代表 0―2
2―1 クウェート
(中村、山下)
日本五輪代表 0―1
ネパール戦・インド戦
左の布陣が、タイで行なわれたアジア大会一次リーグの日本の布陣です。
●この時、日本は中村が発熱の為に試合に出られず、日本は攻撃的な位置に小野を入れた、3-5-2の布陣を敷きました。
●GKは南がフル出場。ハイボールにも強い所を見せ危なげなくゴールを守りました。
●3バックは、基本的に古賀(正)、宮本、戸田の3バック。相手が多少力が落ちる事もあり、それほど危ない場面はほとんどなく高い位置にラインを保って、相手の攻撃を封じていました。
●左右のウイングバックは、この2試合でトルシエ監督は次々に選手を試します。左は、中谷、市川、古賀(誠)が、右には市川、そして本来はボランチの明神が起用されました。
●左サイドの中谷は決して悪い出来ではない印象でしたが、トルシエ監督はインド戦では先発に市川を起用。また明神がフルではありませんでしたが、右サイドで起用されました。
市川は左右どちらのサイドでも積極的な攻撃参加は見られましたが、やはり右サイドの方が、正確なクロスボールが上げられるなど機能していました。明神の右サイドは慣れていない事もあり、クロスボールのタイミングや攻守の動きに戸惑いがありました。古賀誠は短い時間の出場でしたが、正確で強い左足は健在。相手が引き気味だった事もあり、無難な出来でした。
●ボランチは、石井を稲本が勤めました。稲本の方がやや攻撃に積極的に参加し、石井も時折は攻め上がりましたが基本的には、中盤のスペースのカバーと攻守の繋ぎとしての役割を果たしていました。2人とも豊富な運動量で中盤の底を支えていました。
●攻撃的な中盤には、小野が先発していましたが後半はいずれも途中交代。ネパール戦では、FKを直接決めますが、やや疲れているのか、動きは決して十分ではありませんでした。
●FWは基本的には、福田と高原の2トップ。ネパール戦では後半、高原に代えて広山が投入されました。福田はこの慣れないポストプレーをこなしながらも、高原との2トップの布陣でやや負担が軽減された事もあり2試合では3得点。まずまずの出来でした。
●広山は、2試合とも途中出場ながら、持ち前のスピードのある突破でスペースに飛び出す動きが生き、何回かチャンスに絡んでいました。
●この試合、日本は相手がレベルが落ちる相手という事もあり、終始有利に試合を進め。2勝で2次リーグ進出を決めました。しかし、タイの暑い気候の中でのプレーに、コンディションを崩す選手や怪我をしている選手なども多く、決して2試合とも満足のいく出来ではありませんでした。トルシエ監督も選手を本来とは違うポジションで試すなど、勝利以外の面でも色々と策を講じている様でしたが、その意図はまだハッキリとは見えて来てはいません。
韓国戦前半
左の布陣が、2次リーグ緒戦、韓国戦の布陣です。
●日本は中盤に中村が復帰。福田の1トップの3-6-1の布陣。また、ボランチには明神、右のウイングに広山、左のウイングには市川が先発しました。
●韓国のメンバーは若手主体の編成とはいえ、フル代表のメンバーが何人もいる構成。日本にとっては真価が試される試合でした。
●日本は、前半の序盤こそ中盤でボールを支配し、速いパス回しから韓国のゴール前に迫るシーンもありましたが、身体能力で優る韓国の前に徐々に押され気味になってしまいます。
コンパクトに保とうとした中盤も、暑さの為にやや間延びしてしまい、再三、DFラインの裏を韓国のスピードのある攻撃陣に突かれてしまうシーンが目立つ様になりました。
●1トップで出場の福田も、韓国の強固なDFの前にボールをキープ出来ず、また中盤の中村と小野の連携も悪く、日本は攻めてを欠きました。
●左右のウイングバックの市川・広山も、やや押され気味の展開に、持ち前の攻撃参加が陰を潜めてしまいました。
●ボランチの稲本と明神は、暑さの中でも積極的に動き回り、再三チャンスを作りかけますが、打開にまでは至りませんでした。
●日本は、前半の半ば以降は押され気味の展開が続き、前半中頃、南のペナルティエリア内でのファウルからPKを与えてしまい、これを決められて韓国が先制。日本は0-1で前半を折り返します。
韓国戦後半
左の布陣が後半の布陣です。トルシエ監督は、小野を引っ込め中盤の底に石井を入れ、広山をトップの位置に上げ、更に市川をDFラインの右サイドに入れて、4-4-2の布陣にします。更には途中からは広山に代えて山下を投入します。
●しかし、選手間でポジショニングの確認が十分になされていない時間の後半2分、日本はDFラインのオフサイドトラップの間をかいくぐられて、韓国の崔龍洙にゴールを決められ、0-2とリードを広げられてしまいます。
●その後も試合のペースは終始体力で優る韓国ペース。日本はボールを奪っても、韓国の激しいチェックの前に攻め手がなく、後の方でボールを回している事がほとんどありませんでした。
●交代で入った山下も、十分には機能出来ないままに終ってしまいました。
●暑さの為もあって日本選手の運動量はガクッと落ち、疲労は明らかでした。DFや中盤の石井、稲本当たりがなんとか踏ん張りこれ以上の失点はありませんでしたが、精一杯といった印象でした。
●結局、試合はこのまま0-2で終了。日本はこのチーム結成3戦目で初黒星を喫しました。
●日本は暑さの中、明らかに疲労が激しく、また体力的にも韓国の激しいプレッシャーと高さとスピードの前に、得に後半は何も出来ないままに終ってしまいました。トルシエの積極的な戦術変更も効果的な打開策にはなりませんでした。
クウェート戦
左の布陣が第2戦、クウェート戦の布陣です。
●トルシエは、DFラインは宮本、戸田、出場停止の古賀(正)に変って山口の3バック、右のアウトに市川、左のややアウトサイド寄りには中村を起用。また、FWは2トップで福田と山下が先発しました。
●この日は、それまでよりも試合時間が遅かった事もあり気温が少し低く、日本は序盤から前までの試合とは打って変って積極的なプレスが機能していました。
●DFの3バックも、積極的に高いラインを保つ事が出来、スピードのあるクウェートの攻撃陣から再三オフサイドを取っていました。
●左サイドで起用された中村も攻めの起点として、この日はパスワークが冴え、前線に好きパスを出せていました。小野も、それまでよりは動きに冴えが見られましたが、まだ中盤での連携は十分とは言えない印象でした。
●ボランチの位置に入った、稲本、明神もこの日も中盤で積極的にチェックに行き、得に稲本はこの日も積極的に攻め上がり、ドリブル突破も見せるなど、出来の良かった中盤の中でも一際光っていました。
●日本は前半から攻めの形を作り、何度もゴールチャンスを生み、福田や小野がシュートを放ちます。一方のクウェートも、日本の高いDFラインの合間を縫ってゴール前に攻め込みますがシュートミスや南の好守の前に、お互いに無得点で0-0で前半を折り返します。
●後半、トルシエは小野に代えて広山を投入。日本は変則的な3トップの布陣になりました。広山は中盤のやや右サイドの高めの位置からスペースに飛び出す動きで、クウェートDF陣を撹乱し、自身もチャンスに絡みます。
●これにより、ゲームメーカーの中村は、パスの出し所が増えた事で、攻めのバリエーションが増え、チャンスの回数が増える様になります。ただ、その分守備に対する意識が薄れてしまったのか、何回か裏のスペースを突かれてしまう場面もありました。
●一進一退の攻防が続いていた後半の終盤、日本はクウェートに左サイドからの速攻を素早く合わせられてしまいゴールを決められ、またしても先制されてしまいます。試合のペース自体は五分だっただけに痛い先制ゴールでした。
●しかし、日本は全体的なペースは崩す事なく、福田に代えて高原を投入しますが、中盤でしっかりパスを繋ぎ守りを固めるクウェートゴールに攻め込みます。
●日本は中盤でボールをキープしていた高原が右サイドの広山にパス、それを広山は右サイドをかけ上がりセンタリング。それを山下が、クウェートDFの間を抜けてダイレクトでヘディングシュート。これが決まり日本は同点に追い付きます。
●更にその後も、日本は攻め込みます。後半42分、ロングボールに広山が走り込んだ倒されPK。これを中村がしっかりと決め日本は逆転に成功します。
●このまま試合終了。日本は2-1と強敵クウェートを逆転くだしました。
●この試合では、左アウトサイドで起用した中村が機能し、また交代出場で入った広山がアシストとPKとなるエナルティを受けるなど、トルシエの采配が当たった試合でした。そして、それ以上に先制されても慌てる事なく、自分達のペースを守った選手達の頑張りが目立ちました。
●日本はこれで2次リーグは1勝1敗、決勝トーナメント進出へ向けて望みを繋ぎました。
UAE戦後半
勝負のかかったUAE戦、日本は先発はクウェート戦と同じ、中村を左サイドに置いた3-5-2の布陣でスタートします。
●日本は、前半からクウェート戦同様にプレスサッカーで中盤を支配し攻めに転じますが、ゴール前を固めてカウンターを狙うUAEの前に、最後の決定的な形が作れません。
●全体的なプレスは良かったものの、連携の面でイマイチな印象でした。サイドの上がりも抑えられ、小野・中村も執拗なマークでなかなか自分のプレーが出来ていませんでした。
●小野はまたしても後半は広山と交代。クウェート戦と同じように変則の3トップの布陣になります。しかし、攻め込んでも点が取れない状況は改善されませんでした。
●後半、日本はUAEにゴール前のボールを運ばされ混戦、そこを押し込められてしまい、UAEに先制されてしまいます。
●失点を喫した後、トルシエは更に中盤に石井を投入し、市川を3バックの一角に下げ、3-4-3の布陣を敷くスクランブル体制を敷きました。
●しかし、最後までUAEのゴールを崩すことが出来ず、このまま試合終了。日本は0-1で敗れてしまい2次リーグの成績は1勝2敗となり、アジア大会敗退が決まってしまいました。
●日本は中盤でのボール回しは優れていたものの、最終的なところでゴールを決められない。A代表にも共通する課題がここに来て露呈されてしまいました。
●このチームの今大会での問題点は、コンディションの管理が徹底出来ていなかった為にコンスタントに力を発揮できないところ、選手が監督の戦術をまだ十分に消化しておらず、動きが不十分だった事などがあるでしょう
●この大会では、柳沢、中田、松田といったメンバーは不参加でした。しかし、このメンバーが加わってもどの様な戦術を用いて、選手が機能する様に使いこなせるのか?まだ全てを判断するには早いと思いますが、色々と考えるべき点が出てきたと思います。
●あくまで、このチームの目標は2000年のシドニー五輪。優れたメンバーがいるのは誰もが認める所、今後の成長に期待したいと思います。
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